スーパーのレジにて・クレームの体験談
私がレジを打っていると、どこからか野太い声で「おい、お前」と聞こえた。また客同士のトラブルかと思い、声のほうを見ると、短髪を金色に染めた小太りの男が私に手招きしていた。
年齢は40代後半くらいだろうか。
まったく見覚えがないが、間違いなく私に険しい目線を送っている。
慌てて休止板を置いて、私は男性客の近くに歩み寄った。
何かありましたか?と私が尋ねると、金髪男性は、何かじゃねーだろ。と、強い怒声を上げた。
声の圧からクレームだと思いましたが、金髪男性に見覚えがなく、何かした記憶もありません。
怒りの理由がわかれば謝罪の仕方もありますが、何に対して怒っているのかわからなければ、対応ができません。
私が考え込んでいると、覚えてないはずがないだろ!と再び金髪男性が怒鳴ります。
またクイズ方式かよ。そう腹の中で毒づきました。
騒ぎを聞きつけたナイトマネージャー(夜間の店長)が、二人の間に入ってきた。
「責任者です。本当に申し訳ありませんでした」ナイトマネージャーは有無を言わず謝罪を挨拶と変えた。
このスーパーでは、どんなに理不尽なお客様の言動にも謝罪、返金、返品は当然で、とにかくお客様を満足させるためには手段を選ぶなと教育されている。
個人的には度を越えた対応には不満があるが、突然の責任者からの謝罪があり、金髪男は視線をナイトマネージャーに変えた。
金髪男が言うには、6本パックの発泡酒を購入時に私が強く買い物カゴに置いたために、開封したら泡がたったというものでした。
もちろん、泡がたったという発泡酒の現物は持参していません。
どの程度の泡がたったのか不明ですし、自宅までの距離がわかりませんが、持ち帰り方にも問題があったのではないかと多くの疑問が湧きます。
しかし私の思いを無視して、ナイトマネージャーは謝罪を繰り返します。
私も謝罪しますが、金髪男はこの場に書けない言葉を平然と何度も私に浴びせました。
やがて疲れたのか、金髪男の勢いは弱まっていきます。
すかさずナイトマネージャーは宥め始めて、新品の発泡酒を2本手渡して穏便に帰ってもらった。
金髪男を見送ると、ナイトマネージャーは私に説教を始めた。
謝罪が雑だ。目つきが悪い。口が尖っている。など、重箱の隅をつつくような話をネチネチと。
金髪男が本社にクレームを直接入れると悪評価になるのか知らないが、モンスタークレーマーが去ったのなら、少しは従業員を慰めても良さそうなものだと思いながら、ここでも謝罪を何度もしました。
数日後、私は前出しをしていると背後から「すみません」と声がします。
振り返ると、例の金髪男が笑顔で立っていました。
また何か因縁をつけられると思い、早々に謝罪をしました。もう面倒は嫌だ。
「この前は、言い過ぎてごめんね」
メンヘラなのだろうか。
前回とは全然違う柔らかい物腰だが、何が起きても不思議ではありませんし、会社の体質的に完全に私は弱者でしかない。
改めて謝罪をして金髪男と距離を置いた。
金髪男の姿が見えなくなって、このことを同僚のおばちゃん達に言うと、全員に詫びを言っていたらしい。
聞けば、ポイントカードを持つ常連のようだ。
酔った勢いで強い口調でクレームを入れたのかもしれない。
冷静になり、常連店に行きづらくなると考えたのだろうか。
2020年09月11日 19:42
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